あた〜らしい春が来た♪
 

「新婚さんバトン?」


     4



E これから出勤する旦那様。玄関先であなたはどうする?


バカンス中であるにもかかわらず、時々不定期のアルバイトに勤しむイエスであり。
今回もまた、駅前商店街の中にある雑貨屋さんからの依頼があったということで、
三月中の何日か、出掛けて行く身となっており。
ブッダとの約束で一日4時間以内としていたが、

 「常勤のお嬢さんがおウチの事情で出てこれなくなったんだって。」

お母様がぎっくり腰をやらかしたとかで、
身動きが取れない数日の間は 傍に居て身の回りの世話をしなくちゃならぬ。
なので、その数日ほどは もちょっと長めに出て来てくれないかと昨日いきなり言われてしまい、
いつもなら午後からの4時間なところ、
最初の数日だけは午前中の開店時からいてほしいと頼まれてしまったイエスだったりし。

 「それは大変だよね。」

苦行の数々も、ようよう鍛えられてたそのお体には
単なる鍛錬でしかなかったのではと思えてならない、
それはそれは頑健な肢体をなさっておいでのシッダールタ様には、
ぎっくり腰の痛さというの、あいにく聞いた話でしかないけれど。

 「自分で靴下も履けないどころか、
  顔を洗うために前へ身を倒すことも出来ないって聞いてるけど。」
 「らしいよ。」

イエスもまた自分には覚えがないものか、
気の毒にとは思うが想像するしかない事態へ 苦笑交じりにそうと応じる。
治療も、痛いのが去るまで 基本じっとしているしかないそうで。
それが落ち着くまでは何かと不便なのを助けてあげたいとお休みを申請されちゃったらしく、
そんな事情を説明されずとも、お願いしますと頼まれては無下に断れないのがヨシュア様。
とはいえ、一応はブッダへもお伺いを立てたうえで、
午前からのお勤めとなってしまった彼であり。

 「そうまでの難儀なら、私もお手伝いに行きたいところだけど。」

お昼またぎということで、
多めに炊いておいたごはんでおむすびを作り、
出汁巻きとレンコンを炒め煮した土佐煮を手早く作ったのでお弁当とし、
どうぞと手渡しながら、そんな一言をつけ足したブッダだったのへ、

 「なななな、何言ってるんだい。」

何故だか あわわと慌てだすイエスだったりし。
それほど寒くはなさそうだとあって、それでもと一応羽織りかけてた薄手のパーカー、
まだ袖がちゃんと通っていないのを ぶんぶんパタパタ振り回しつつ、

 「ブッダには、えと、そうそう、
  次の原稿とか梵天さんが言ってきても困らないようにって
  ネームとかいうの書き溜めとかなきゃいけないんじゃあないかい?」

覚束ない用語まで持ち出してという、不慣れな言い回しといい、
いろんなものをいろんな意味から振り絞って総動員している懸命さが
却って隠しごとがありそうなのをありありと伺わせ、
いっそ微笑ましいくらい。

 “相変わらず内緒ごとや嘘が下手だなぁ。”

こっちが気付いたことをこそ 隠すのが大変なほどに、
手振り付きの慌てっぷりが何とも不審な焦りよう。
そういう慣れがなければ
付いて来られちゃいけないの?とついつい追及したくなるよな様子なのをこそ、
注意してやった方がいいのかなあなぞと、
そこまでこっちが深慮しちゃうくらいの不審ぶりのまま。
それでも…差し出されたお弁当の包みへは嬉しそうにちらっと微笑み、
大事そうにカバンへ入れると、

 「じゃあ、行ってきま〜すvv」
 「うん。気をつけて行ってらっしゃい。」

玄関までをついて来て丁寧に見送ってくれるブッダなのへ、
スニーカーをごそもそ履いて、それから…

 「隙ありvv」

身を伸ばしたその流れに乗り、ちょっとばかし かかとを上げると
白毫の脇へチョンと口許を持ってっての軽やかなちうを置いてゆく。

 「あ…。/////////」

慌ててたのを可愛いなぁなんて思ってたところへの、
それこそ思いも拠らない不意打ちだったため、
余計に文字通りの“隙あり”状態になってたブッダ。
ふわっと寄ってきたイエスの気配に 何なに?とドキドキしちゃってこちらこそ焦ってしまい、
ちょんというキスを把握したころには、外へのドアが閉じていた不覚っぷり。

 「もうっ。////////」

すんでで形勢逆転しちゃったの、
やられたと憤慨しかかるも。
小さなキスなんて それもまた可愛らしい悪戯のようなもの。
触れただけのようだったそれが贈られたおでこ、
揃えた指先でそおと触れたブッダもまた、
くすすと小さく笑ってみせる。

 “さて。”

F 旦那様が出勤して家で一人です。どうしますか?

浪費家なイエスだが、それ以上に意味のあるバイトらしいと薄々察しているブッダでもあり。
なればこそ、何度かは一緒に手伝ったお仕事だというに、
それほど強引に私も行こうか?と押して見せなかったのでもあって。
今年のイースターを調べたら随分と早かったので、ありゃまあと段取りを構えたと同時、
バイトを探してか買い物先でそわそわを始めたイエスだったのへも気がついて。

 “もしかして…。”

今年は三月中のイースター。
それが済んでからやって来る四月の頭には、
ブッダのお誕生日、花まつりがある。
毎年律儀にも何かしら祝ってくれてる彼なので、
その準備をと思っての資金繰りでもあるアルバイトなら、
そこへ当事者のブッダまでが手伝いに来るのは、彼としては落ち着けないのかもしれぬ。

 “収入の使い道は別の話になるものだろうにね。”

それでも、何のために頑張っている労働なのか、
その頑張りの姿を見せるのは種明かしになって興ざめだくらい思うのかもしれずで。

 “それより何より、こちらの先回りのしすぎで
  当人はうっかり忘れてましたっていうのも捨てがたい、かな?”

M−1も復活したことで芸人への道も忘れちゃいませんということか、
やや自虐気味にセルフツッコミを入れかかったブッダだが

 「…それはないな。」

ああもう、何でああも判りやすい彼なのだろうと
我がことへの含羞みのように胸の内にて地団太を踏み。
そして、何ていろいろと錯綜している自分なんだろうと、
聡明であればこそ先回りしちゃう頭の回転の小賢しさへ、
ちょっぴり歯痒くなったりもして。
ピュアで清廉、
時々何か物欲的なことへささやかな下心が沸かないでもないらしいながら
そんなところも筒抜けの、何ともかんとも可愛らしい人。
だっていうのに、その隠しごとが下手な部分は、
躊躇なく開かれる懐ろへ何物でも受け止める寛容さという
頼もしさへと反転してしまい、

 『ぶ〜っだvv』

朗らかに、陰りなんて一片もない笑顔で声を掛けつつ双腕開き、
頑迷なところのある自分をやすやすとほだして、
すっぽりくるみ込んでしまうのだもの…。

 「……。/////////」

ああ、なんて恵まれているのかな。
他の人へばかり齎されていたその慈愛、
こんな甘い感触にて存分にそそがれる立場になれたなんてと。
ふんわりふくよかな胸元へ手のひら伏せて、
感慨深くもうっとりと感じ入っているのかと思いきや。

 「…私が他愛ないだけなのかなぁ。」

敵わないなぁと思うのは、
自分もまた隙だらけだからかもしれないなぁなんて。
下界の油断も隙もない世情にそれなり触れて来て得ていた蓄積と、
自身の無垢さや寛容さとのギャップ、
今更 自覚というか認識してみた釈迦牟尼様だったのもご愛嬌。
余計な考え休みに似たりと言いますよ?
さあさ、メモ帳開いてネタでも練ったほうが…。(苦笑)



  もちょっと続く。(笑)





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 *そんな理由があってのアルバイトだそうで。
  そしてその裏書きへもうすうす気づいてるブッダ様ですが、
  黙っててあげるのが大人の対応。
  それどころか、自分もまた未熟と思ってしまうところが、
  ウチのブッダ様ならではの仕様なようです。(う〜ん)

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